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まつもとあつしの日々徒然

はてなダイアリーからようやく移行しました

一取材者としての雑感(あるいは広報担当の方への切なるお願い)

ネット公開後の記事の修正というのは、とても気を遣う作業だ。大手新聞社のそれと違って、自分の場合は事前に取材先に記事を見て貰うことが多い。

もちろん、それによって記事が丸く、つまらなくなってしまうリスクもある。
けれども、そういった守るべき点については編集さんと一緒に先方と協議するようにしている。

いろいろ紆余曲折を経て記事は公開される。
それでも公開後に、各所からの反応を受けて「直して欲しい」と言われることがある。

いろいろ事情はあると思う。想定していないところからクレームが付いたということだってあるだろう。
Webだから物理的に直せるはず、という思いもあるだろう。

だから、そのあたりの事情を察して応じる(正確に言えば編集権のある編集部に修正を依頼する)こともある。
ただ、そのとき「最初の記事が間違っていたから正すのは当然の作業だ」という風には絶対言って欲しくない。

まずこの「正しさ」というのが、立場によって様々だ。端的に言えば「あなたにとって正しくても、そこで様子を見聞きした自分からすれば正しくない」ということが起こりうる。
というか、もちろん下調べして臨んでいますが、いやそれ中の人じゃないとわかんないでしょ、みたいなことも結構「調べれば分かること」などと言われたりする。
調査のコストをそちらが負担頂けるなら、そうしますが、とのど元まで出てグッとこらえる。

インタビュー取材も、イベントなどの同行取材も言わば一期一会で、短い時間に多くの情報を見聞きし記事にしている。
残念ながら双方に間違いや勘違いが起こることもある。というか、普通起こる。
紙面と違って文字数の制約が少ないWeb記事は、余すことなく要点を伝えることができる。結果として間違いが含まれる確率も上がっていく。
なので事前に記事の確認を行う。行った以上、最初の記事は先方と責任を共有している思っているし、ビジネス倫理上もそうあるはずだ。

記者は取材対象のリリースを代筆している訳では無い。
時には競合との比較など読者のとって利益のある情報をどうしても入れたい場合もある。
そういった情報を削除した記事で、注目を集めたケースというのを殆ど知らない。そうなってしまっては双方時間と労力の無駄というものだろう。
なので、これは間違いなのか、それとも「伝聞情報」として妥当なのかというのは発信者とは異なる基準がある、ということも広報をされる方には是非知って置いて頂きたいポイントだ。

ということで散文にはなってしまったが、結構この話題にはいろんなアジェンダが含まれている。

  • 事実とは何か?(真実とは存在するのか)
  • 外資NPOなど責任所在が違うところにあったり、分散している場合の広報対応とはどうあるべきか。
  • 攻めの広報か、守りの広報か。
  • 情報の軌道修正とはどこで図られるべきか。

取材ソース、取材・執筆者、編集者、校閲者などの関係者が1つ1つ判断して、表現や記述を選択していく。
なので、「間違っているから直せ」というのはやはりあまりにもそのあたりの関係者の努力や労力を無視しているものだと言わざるを得ない。
まして、それが2度、3度と及べばいくら取材対象の商品やサービス・活動が魅力的でも、読者に伝えることに対してモチベーションが下がっていくのは避けようがない。

ウィキリークスの例を出すまでもなく、リアルタイムインターネットの時代は望む・望まないに関わらず一旦出てしまった情報はもう無かったことにはできない。
魚拓なんて面倒なことをしなくても、Google検索だってキャッシュを残してくれる。(申請し認められれば消えるけれど、その間に魚拓はしっかり取られているでしょう)
冒頭に述べたように、一発だしで事前確認や修正に応じない媒体も多い。

むしろ、そんな取り返しの付かない記事の内容を云々するよりも、出た後の対応を的確に行う方がよろしいのではないでしょうか?と老婆心ながら思ったりもする。
「情報」を扱うIT企業や、それを専門とする研究者であれば尚更、そのメカニズムには精通しているはず。(と信じたい)

とはいえ、そんなお堅いことを言わないでも、たぶん、きちんと事情を説明して詫びてくれれば多くの場合は収まるわけではありますが。
ということで、ぜひ広報あるいはそれに従事する人は腹をくくって対応に当たって頂ければと、一物書きからの提言でした。

蛇足:残念な経緯の一例(特定が目的ではないため日付はぼかしてあります)

7月某日:初稿完成。先方広報担当者に確認点を記したメール送付。同日1点確認の上回答する旨一次回答有り。
4日後:追って連絡あるという事項が返信無いため、こちらから確認メール発信。その内容で問題無い旨返信あり。
7日後:記事公開
8日後:広報担当者より更に追加の修正依頼有り。確かに必要な配慮と思えたので編集部に連絡。同日中に修正反映。
9日後深夜:広報担当者より電話で3度目の修正依頼有り(主に2点)。「大至急」と気色ばむ電話だが、修正点に曖昧なところがあったので、メールでとりまとめて頂くよう依頼。
10日後早朝:別の担当の方からメールで窓口を代わる旨通達。引き続き送付された修正依頼メールでの修正箇所は10箇所を越える。こちらからは記事のチェック体制について見直しを依頼。
10日後日中:編集部と協議。編集権の問題からもさすがに難色を示されつつ納得してもらう。
13日後:出張を終えた編集担当による記事の再修正完了。結果確認した新しい担当の方から「今回の修正は適正であった(記事チェック体制の見直しについては言及無し)」旨メッセージが届いており、その真意を確かめるメールを送るが現時点では回答無し。

→こういう経緯を経てしまうと、いくら素敵なプロダクト・サービスであっても、次取材しようというモチベーションは正直失われてしまいます。また単純に顧客を含めたビジネス対応としてどうなんだろうという疑問も持ち上がります。

#2011.08.04 2:22 追記
先方より広報体制の見直しについても具体的なご連絡を頂きました。ありがとうございました。
これまで数十に及ぶ取材と記事公開を行っていますが、ここまで難渋したのは初めてではあること申し添えます。