まつもとあつしの日々徒然

はてなダイアリーからようやく移行しました

まず責めるのは学生ではなく運営ではないだろうか、という話。

本当に痛ましい事故が起ってしまいました。亡くなられたお子さんに心からお悔やみを申し上げます。ご両親のお気持ちを考えると胸が張りさけそうな気持ちになります。

www3.nhk.or.jp

 いまネット上には、この展示物を制作した学生を責める声に溢れています。

「なぜこんな燃えやすい構造にしたのか?」と火災を彼らが予見できなかったことに対する批判がその多くを占めているようです。

しかし、事の本質はそこではないように思えます。もちろん彼らにも大きな責任がありますが、私がこの事故で最も「拙い」と驚いたのは、主催者がこの火災の後もイベントを終了まで何事もなかったかのように続行したことです。

 上記記事には「火災のあと、入場はストップしたが、入場済の人には警察に了解をもらったうえで展示を見てもらった。消火作業は終わっており、現場にはフェンスも張っていた。混乱を招くおそれがあるため、アナウンスはしなかった」とあります。このことに運営者のリスク意識の無さが如実に表れているように思えます。

広く様々な個人・団体から「アート」という名目で作品を集める以上、そこにはさまざまなリスクが生じます。これは、例えばコミックマーケットのような同人誌イベントでも同様で、だからこそ運営側には高いスキルが求められます。

あれだけの作品数を事前にチェックするのは現実的に不可能だった、という指摘もあります。わたしもそれは同感です。たとえ事前に図面などでチェックしたとしても、当日現場でその仕様が変わることは容易に想像が付きます。だからこそ、現地での巡回が重要になるのです。多くの同人誌イベントでは、レギュレーション違反が当日、現地の巡回で発覚すれば、その状態が是正されるまでは販売・頒布の停止処置を受けることになります。

直接のリンクを貼ることは避けますが、今回の事故を受けての、東京デザインウィークの関係者のTweetやFacebook投稿を見ると、どこか他人事であるのが気になります。中には「今回のことから学んで次に活かさねばならない」と、はやくも次回も行われることを前提に総括をされているものすらあります。火災が起きたこと、被害者が出ることが避けられなかったことは、イベント運営者の能力に重大な欠陥があることを示しています。その時点で即刻イベントを中止にするべきではなかったでしょうか? そのこと1つをとっても、東京デザインウィークの再開は厳しいものがあると思います。

学生を責めるのは簡単ですが、自由な表現を楽しめる場にあって、それを普段は楽しんでいる側の「私たち」が、経験の浅い表現者を責め立てるのは筋が違うと考えています。多様な作品を集め、そこに人を集めて、何らかの利益を得る運営者こそが、一義的に大きな責任を負っています。現地での巡回はもちろん、内容に応じたゾーニングを行うといった対策によって避けられるリスクは少なくないのです。東京デザインウィークでは、そこを出展者や運営委託者に任せっきりにしていなかったのか? これからの検証を待つ必要がありますが、まずはそこに注目したいと思います。

(2016/11/08 2:30追記)

これを書いた少し後で公式サイトにお詫び文が公開されましたが、こちらがやはりよろしくありません。

TOKYO DESIGN WEEK 2016|TOKYO DESIGN WEEK 東京デザインウィーク

前略・草々といった挨拶文があるのも首を捻りますが、「事故原因の調査結果を待つことになります」という一文には驚かされました。自らによる調査や、証拠保全などの取り組みは行われないのでしょうか? また学校側が記者会見を開いて直ぐに謝罪したのに対し、原因の調査結果を待つ、というのはどういうことなのでしょうか? (2016/11/08追記:6日夜に記者会見が開かれました。ただ、報道の通りチェックのあり方については言及されていません)清水亮さんが怒りのブログを上げておられます。全く同感です。

d.hatena.ne.jp

 

#記事公開時、学校名に誤りがありました。お詫びして訂正します。

#2016/11/08 タイトルを変更しました。